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瀬名秀明/手塚治虫の「小説ブラックジャック」 [読書]

小説 ブラック・ジャック (APeS Novels)

小説 ブラック・ジャック (APeS Novels)

  • 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
  • 発売日: 2019/07/16
  • メディア: 単行本
本書は秋田書店と誠文堂新光社の両社によって企画された、新たな文芸エンタテインメントを生み出す新レーベル「APeS Novels」のシリーズとして発刊されたものです。
手塚治虫の原作に基づき、「パラサイト・イヴ (新潮文庫)」でお馴染み、科学小説系で実績のある瀬名秀明さんが小説として書き起こしたもの。
とはいっても俗にいう漫画のノベライズ本ではなく、原作から新たにイメージされた世界をまったく新しい世界として生み出された小説となっています。
したがって、ブラックジャックは今を生きており(本書が出版されたのは2019年)、原作の時代にはなかったスマホも作品の中で重要なツールとして登場します。iPS細胞研究所の山中先生(小説内では名前は特定されていませんが、だれがどう読んでも山中先生です)も登場。ブラックジャックと会話を交わしています。
過去のエピソードをちりばめ、今の時代のお話と書かれていますが・・・ふと素朴な疑問、2019年現在でブラックジャックは何歳になっている????相当なお歳ではないかと思うのですが、その手術の際の手技や病気に対する判断は現役そのものです(感動)。
まあ、細かいことは気にせず、といったところで楽しめた本でした。原作がたくさんあるので、続編はいくらでもつくれます・・・乞うご期待!

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今村翔吾の「羽州ぼろ鳶組」シリーズ [読書]


火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

  • 作者: 今村 翔吾
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 文庫
夜哭烏――羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

夜哭烏――羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

  • 作者: 今村翔吾
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2017/09/15
  • メディア: Kindle版
直木賞候補になった今村さんの作品です。候補作となった「じんかん」を読もうと思ったのですが、このぼろ鳶シリーズが人気との評判を聞き、手に取った次第。
いやーおもしろくって一気に2冊読破してしまいました。人に相手にされない存在、無視されがちな存在が一念発起、奮闘努力して世にその存在を知らしめるという展開は、多くの人にとって痛快で支持されやすいと思うのですが、本シリーズはそれを嫌味なく、気持ちよく読ませてしまうところに人気の秘密があるのかもしれません。
かつては火喰鳥として正真正銘、飛ぶ鳥を落とす勢いのあった江戸一番の火消が、同僚の妬み嫉みの果てに失意のどん底まで落ちるものの、心身ともに復活を遂げるまでのストーリーがこの1-2巻です。
江戸時代、大名火消、町火消があったことは知識としてはあったものの、その種類や役割については本書を読むまでは全く知りませんでした。火消といえば、某時代劇やかつてのヒット曲に出てくる「め組」程度の存在しか知りませんでしたから・・・
主人公松永源吾が所属する羽州新庄藩戸沢家という舞台もよい。6万石強という戸沢家に対し、ライバルは加賀百万石前田家の加賀鳶という設定。ぼろ鳶の由縁もこの辺の家の規模が関係しているのですが、主人公たちのステージと周辺の登場人物たちのキャラクターがまた良い・・・・
ちょっと書いているうちに興奮?支離滅裂になってきたので、3巻以降を読んでから書くことにします。
今回はここまで。

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堂場瞬一の「凍結捜査」 [読書]

凍結捜査 (集英社文庫)

凍結捜査 (集英社文庫)

  • 作者: 堂場 瞬一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/07/19
  • メディア: 文庫
少し前に読み終わっていたのですが、ここにアップするのに随分と空いてしまいました。
前回アップした「抵抗都市」に引き続きロシアがらみの作品です。とはいいつつ本作は、「検証捜査」シリーズの作品。「 検証捜査 (集英社文庫)」で横浜に集まった全国の刑事がそれぞれの県警等に戻り、そこで新たに事件に遭遇する一連の捜査シリーズの北海道警察版、保井凛刑事の事件です。
シリーズ主人公である神谷とシリーズ唯一の女性刑事である保井との関係性はともかく、ロシアの影がちらつくことでスケールの大きなお話となりました。
中盤から後半にかけてかなりアクションも交え、大きく物語が展開するのですが、事件のキーポイントは最初の部分にあったということを後で知らされます。なるほどね、と納得の展開。
気になるのがこのシリーズの行方。一応、横浜に集まった人たちの”ふるさと”は全部回ったことになるわけですが、ここで終わらせるのはもったいない気もします。
警視庁に戻った神谷から再スタートという感じにならないのでしょうか?堂場先生!

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佐々木譲の「抵抗都市」 [読書]

抵抗都市 (集英社文芸単行本)

抵抗都市 (集英社文芸単行本)

  • 作者: 佐々木譲
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: Kindle版
もし、日露戦争で日本が負けていたら・・・おそらくは世界史、とくにアジアの歴史は今とは相当異なることになっていたかもしれません。その後の日中戦争、太平洋戦争もなかったかも。第二次世界大戦があったとしても、その様相は違った展開になっていたかもしれません。
本書はその「かもしれない」歴史下におけるお話。日露戦争は日本の勝利ではなくロシアが戦勝国という形で終息し、ロシア主導による同盟、外交権と軍事権をはく奪された保護国という立場に貶められているという設定。
進駐軍ならぬ統監府というロシアの出来先機関が日本を支配。日本、東京のロシア化が着々と進んでいる明治期から大正期という時代設定です。
肝心のお話は殺人事件をおう警視庁の若手刑事と所轄のベテラン刑事の物語。事件の真相を追う過程で、ロシアとの関係を維持しようとする勢力と日本の独立を果たそうとする勢力とのせめぎ合いが事件の背後にあることが明らかになってきます。
殺人犯をとらえるという絶対的な正義と、国を維持(日本の主権を回復しようとすることも含め)しようとする正義のとの対立が、物語の背景を貫くテーマだと思いますが、いずれの権力によっても一方が他方を押さえつけるという構造は全く不幸であるということを感じさせる展開でありました。こういう設定がドラマを生むということなのでしょう。
物語は含みを持たせた形で終わっています。この時代設定のまま数年後の”占領下の日本”で続編があるのでしょうか?

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有栖川有栖の「狩人の悪夢」 [読書]

狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: Kindle版
文庫化にあたってのあとがきと宮部みゆきさんが本書について書いた書評を読んで、なるほど!と思いました(決して夏休みの読書感想文の宿題であとがきを引用するということではなく・・・ちゃんと最初から最後まで読みました!w)。
火村英生の冷徹ともいえる解き明かしと情緒的に事件を追うアリス。このコンビの醸し出す雰囲気がリズムとなって複雑怪奇な事件を解決していくというパターンは、派手なアクションなどはないけれど、ある種痛快であり、本シリーズの魅力だと思っています。
そんな印象を漠然ともっていた私にとっては、宮部さんが寄せた書評は”目からうろこ”でした。動機を考えずに事件を解く・・・火村の事件に対する姿勢や態度がシリーズの肝になっていたこと。なるほどね、という感じです。
本書はある意味で密室物。被害者の背景はわからないまま猟奇的ともいえる方法での殺人や中途半端な遺留品の存在など、読んでいてまったく見当のつかない展開でしたが・・・・
舞台は限られた空間ながら、物語の導入で語られている今回のストーリーの背景を彩る世界観(ハリウッドで映画化など)が、最後までひきつける装置になっていたような気がします。

火村シリーズも25年だそうです。ながいですよね~

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呉座勇一の「陰謀の日本中世史」 [読書]

陰謀の日本中世史 (角川新書)

陰謀の日本中世史 (角川新書)

  • 作者: 呉座 勇一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/03/09
  • メディア: 新書
前回の投稿から1か月以上空いてしまいました。もう7月ですよ。新型コロナウイルスの感染拡大によるイレギュラーな日常により、仕事はもとより普段の生活もペースが完全にくるってしまいました。私にとっては月に2-3冊の読書タイムがとれなくなってしまい、必然的にブログからも遠ざかってしまったという感じです。
そんなイレギュラーな状況下でなんとか読んだのが本書です。
保元・平治の乱、源義経の悲劇、鎌倉将軍・幕府内の権力闘争、南北朝・観応の擾乱、織豊から徳川政権移行時に至る一連の歴史的出来事にまつわる陰謀論を作者が淡々と冷静に否定していく・・・呉座先生の冷徹かつ鋭いつっこみは、なるほどっと納得させられる反面、長年、小説やドラマ、映画などに親しんできたものには少々残念な結論に導かれる結果となっています。
逆にいえば陰謀ありきの歴史が圧倒的に面白く、ビジネスの社会でも、ある種のストーリーが教訓だったりする訳です。
まっ、歴史の教訓を現在に活かすという観点からすると、陰謀論のような出来事の背景を盛った話は極力排除したほうが良いのかもしれません。恣意的、意図的に解釈されないためにも。
作者の「 応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書) 」よりも圧倒に読みやすい。歴史好きの人には記憶を整理しつつご自分の歴史観を新たに持つうえで良書だと思います。


タグ:日本史 陰謀
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デニス・ジョーンズの「ヴァチカンへの密使」 [読書]

ヴァチカンへの密使 (新潮文庫)

ヴァチカンへの密使 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/05/25
  • メディア: 文庫
正直、このデニス・ジョーンズという作家さん、知りませんでした。義弟から随分前にもらった文庫。自粛期間中、本棚を整理していて出てきた本。知る人ぞ知る作家さんなのでしょうが、勉強不足でした。
さて、舞台は第二次世界大戦前夜のヨーロッパ。ユダヤ人を忌避する社会情勢がヨーロッパ各国で高まりつつある中で、ナチスドイツの命によりユダヤ人になりすまし、ヴァチカンに向かったドイツ人のお話。
ダブル主演ともいうべき作品で、もう一人の主人公はモサドの前身である組織で世界各国から追われたユダヤ人をパレスチナに送り込む活動を担っているユダヤ人。
なりすましユダヤ人に課せられた命令は何か?それを見破り阻止できるのか?ネタバレになるのでこれ以上は書けませんが、最後の数十ページは目が離せない展開となります(若干、いらないだろう、というアクションがありますが・・・)。
小説の中身としてはまあまあ(あくまでも個人の感想ですw)ですが、何よりもヨーロッパから中東におけるユダヤ人の立ち位置とそれを取り巻く当時の政治、軍事の情勢がよくわかって面白かった。勉強になりました。
なお、物語の中でアメリカ人女性が“活躍”する部分があるのですが・・・いまいちはまっていなかったような印象があります・・・あくまで個人の感想ですがww

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さいとうたかおの「太平記」〈上〉〈中〉〈下〉 [読書]


太平記〈上〉―マンガ日本の古典〈18〉 (中公文庫)

太平記〈上〉―マンガ日本の古典〈18〉 (中公文庫)

  • 作者: さいとう たかを
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/09/01
  • メディア: 文庫





太平記(中)―マンガ日本の古典〈19〉 (中公文庫)

太平記(中)―マンガ日本の古典〈19〉 (中公文庫)

  • 作者: さいとう たかを
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/10/01
  • メディア: 文庫





太平記(下)―マンガ日本の古典〈20〉 (中公文庫)

太平記(下)―マンガ日本の古典〈20〉 (中公文庫)

  • 作者: さいとう たかを
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/11/01
  • メディア: 文庫

ほぼ1か月ぶりの更新です。書店も図書館もコロナ禍で満足に利用できず、家にあった古い本を読みなおしたりなんかしてましたが、どーもいけません。集中して読めない。

どうしてだろう?とつらつら思うに、日々の読書タイムであるはずの通勤という行為がなくなったことが大きいと気が付きました。

テレワークになって電車に乗る機会も減り、通勤という「儀式」がなくなったせいでメリハリがつかず、家ではだらだらしてしまう始末。

こうした時間、生活に慣れなければならないし、巷間いわれるように、コロナ禍が新しい社会、世の中をつくるきっかけになるとしたら、テレワークそのものがずーっと続くかもしれない。

これはなんとかしなければならないと思って読んだのが「太平記」です。ご存知の方も多いと思いますが、各時代の古典を名だたる漫画家が書き起こしたシリーズの中でも読んでみたいと思った作品です。

ゴルゴばりの登場人物がたくさん出てきて、少々疲れます?が、戦いに明け暮れたほぼ60年間を端的、かつ分かりやすく描いている。文庫版なので注釈の文字、ポイントが小さいのが難でしたが、読書生活?復活のためのリハビリとしては手ごろでした。

アマゾンで購入したのですが、一時的に在庫切れ、というメッセージがしばらく出て、手に入れるのに少し時間がかかりました。人気があるのでしょうか?


タグ:太平記
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東野圭吾の「パラドックス13」 [読書]

パラドックス13 (講談社文庫)

パラドックス13 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/15
  • メディア: 文庫
随分前に単行本で一度読んだ本、再読です。
設定としてはハリウッド並みの壮大なもの=宇宙の変調?に巻き込まれた登場人物たちは極めて日本人的であり(事実日本人しか登場しない)、物語そのものに派手さは感じられない内容となっています。
かなり前に発刊され、人気作家である東野先生の作品だけに読んだ方は多いと思いますが、あえてネタバレ的なコメントは避けたいかな。スケールの大きさの割には地味な展開であり、結果として登場人物たちが解決に導くわけでもなく、人知の及ばない現象に身をゆだねることになって物語は終わります。
これがハリウッドだったらそうはいかない。彼らはなんとかしますから・・・・
とはいえ、話としては一個人がなんとかできるものではなく(いかなるスーパーヒーローでもこれは無理でしょう)その世界に身をゆだねるしか方法はないわけですが、そうした状況の中でいかに生きるか!ということなのでしょう。何か今の新型コロナウイルス感染の状況に似ていなくもない。
彼らの最後はだれも見ていない(見られない)わけですが、見られなくても人として思うところを貫く、というのは美しいような気もします。
私としえば後半、最後の部分で慌てふためくキャラになってしまいそうで・・・精進します!

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五十嵐貴久の「コヨーテの翼」 [読書]

コヨーテの翼

コヨーテの翼

  • 作者: 五十嵐 貴久
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2018/12/19
  • メディア: 単行本
東京オリンピックが予定通り開催されるという前提で書かれた本です。当たり前です。だれも延期するなんてこと想像すらしていなかったでしょう。
コヨーテは正体不明の暗殺者、ヒットマンです。某国の宗教組織(いずれも架空)の依頼を受け、オリンピック開会式に臨む日本国首相アナンの殺害を請け負います。本書はそれを阻止しようとする警察官との攻防を描いた作品です。
日本国自体がテロリストたちのターゲットになったのではなく、オリンピックという世界最大の祭典で運営側のトップである首相を殺害することで組織の力を全世界に誇示することが目的。いかにもありそうな話であり、実際にそうのような危険なことを考えている連中もいるかもしれない・・・予定通りであればこうしたストーリーも迫力を帯びてくるのですが、現実世界はテロリストよりも怖い目に見えない敵に屈してしまったという結末を迎えてしまいました。
現実味を帯びた展開はリアルであり、手に汗握るストーリーだったのですが、いかんせん私が読むのが遅かった。残念です。ラストで・・・!?

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