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宮部みゆきの「さよならの儀式」 [読書]

さよならの儀式

さよならの儀式

  • 作者: 宮部みゆき
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/07/10
  • メディア: ハードカバー
SF短編集である。もっともいずれの作品も身近なものがテーマであり、それなりにリアリティがある。近未来小説といっても過言ではないだろう。
現実世界の中で問題や課題が垣間見えるテーマをSFという形でストーリー化し、それぞれのある部分において先鋭化、強調することで成立している話が並んでいる。
正直、いつもの宮部作品のようにスーっと入っていくことができず、なんとなく重苦しさを感じながらの読了。それぞれの作品のテーマからくる重苦しさだったのかも。
未来はバラ色という少し前には消滅してしまった幻滅感を改めて感じさせてくれた作品集であった。

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堂場瞬一の「割れた誇り ラストライン2」 [読書]

割れた誇り ラストライン 2 (文春文庫)

割れた誇り ラストライン 2 (文春文庫)

  • 作者: 瞬一, 堂場
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/03/08
  • メディア: 文庫
ラストラインシリーズの第2弾。アナザーフェイスシリーズに代わる新しい警察小説シリーズだ。今回は50歳を過ぎた刑事が主人公。周りに流されることなく自らのの考えを表明することで、結果的に周囲と軋轢を生みやりにくくなるものの、そこは長年の経験と警察官の正義感を背景に我が道を進むというお話。
鳴沢了的なキャラとは一線を画し(本人は鳴沢を嫌っている)、周囲と協調することは決してあきらめず、若手の面倒もよくみる(みたい、教えたい・・・けど?)という設定は、会社で定年近くなったサラリーマンの置かれた立場に近いような感じでもある。
ま、その辺を狙っている作品だと思いつつ、その気になって読んでいる私も私ですが・・・本作の内容は冤罪、加害者家族(友人知人)、被害者家族といったことがテーマ。地味な事件を主題としているためリアリティがありつつも切ないお話となっている。誰もが加害、被害の立場に巻き込まれ可能性があるということを思い知らされます・・・と言いつつ第1弾を飛ばして読んでしまった。それでも十分に楽しめる作品となっている。

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島田雅彦の「虚人の星」 [読書]

虚人の星 (講談社文庫)

虚人の星 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 雅彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/12/15
  • メディア: 文庫
本書の意味するところはラストの数ページに反映されていると思いつつ、現実の政治や国際関係と本書に書かれた虚構、仮の世界とのギャップを感じつつ(ほぼ≒ですけど)、面白おかしく読ませていただきました。
複数の人格が共存する人こそが”虚人”なのでしょうが、直面する問題を解決するための対抗人格がどのような選択と言動、行動を起こすかという点で、実は世の中、虚しい人によって動かされているという感じもしてきました。
近未来でもあり、ちょっと前の時代でもあり、今の現実そのものであるかもしれず、ある種の緊張感ただよう世界観に満足いたしました。


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佐藤巖太郎の「会津執権の栄誉」 [読書]


会津執権の栄誉

会津執権の栄誉

  • 作者: 巖太郎, 佐藤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/04/21
  • メディア: 単行本

会津に400年もの間、覇を唱えた芦名家の滅亡までの数年間を描いた作品である。伊達家との最終決戦、摺上原合戦にいたるまでの芦名家内部の混乱をさまざまな立場にいる人の視点から描いている。

伊東潤先生から言わせれば「負けるべくして負けた」という感じ。こんな感じでは勢いのある伊達政宗には勝てないという状況ながら、家の存続に力を尽くした登場人物たちの無念のほどはいかばかりにと思ってしまう。

もし、芦名家がほんの少しの間命脈をたもっていたら、秀吉の奥州仕置の形も変わり、特に伊達政宗の処遇がどうなったか?というのは気になる。

まあ、芦名最大の同盟関係にあった佐竹家も時代を読み誤った口。そういう意味で時代の趨勢に押し流されてしまったという感じかもしれない。


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有栖川有栖の「鍵の掛かった男」 [読書]

鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)

鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 文庫
火村英生シリーズの長編本格ミステリ。文庫版で700ページの大作です。
読み応えがありました。ある男の半生をなぞるという形式をとっているため、その分、ページがかさんだことになったわけですが、決して苦にならなったです。読みやすいということもあったと思いますが、切なさとやるせなさが混在した半生に少々引き込まれた感じです。
事件の真相からすると実にありがちな動機があり・・・となるわけですが、そのありがちなものとのギャップがなんともいえない余韻を残す結果となっているような気がします(これから読む人にネタバレにならないように書くと抽象的になってしまいます・・・)。
久々の本格派、堪能いたしました!

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島田雅彦の「人類最年長」 [読書]

人類最年長

人類最年長

  • 作者: 雅彦, 島田
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/02/03
  • メディア: 単行本
いにしえより、不老不死は人類の夢、特に為政者、独裁者、権力を持つものにとっては強かったといわれています。本書の主人公はそれを実現した男のお話です。物語冒頭、主人公は159歳であることが明かされます。
江戸時代末期、万延年間の生まれ。明治、大正、昭和、そして平成を生き抜いた男の人生。不老不死を願ったわけではなく、人よりちょっと成長の度合いが少ないという“症状”でいつしか100歳を超え、未だに死なないでいるという男。
彼の人生は日本の近代化と成長とともに歩んできたわけですが、われわれが知っている「栄光の日本」?とは裏腹の日本の現実がリアルさを持って描かれています。
印象的だったのは時代とともに変わる価値観。今の先進国の国民でござい、という意識や価値観はついこの間成立したようなもの。そうした現実を突きつけられたような気がします。
むろんフィクションなので本書にかかれていることがすべてではないのですが、明治維新以降150年の歴史の中である局面を描いていることは間違いないと思わせる内容となっています。
ある男の生活史、時代に応じて生きる術を探し続けて男の人生。全体としては暗いトーンですが、日本の現代史に間違いなくあったシーンであることは間違いないでしょう。

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木下昌輝の「戦国十二刻 始まりのとき」 [読書]

戦国十二刻 始まりのとき

戦国十二刻 始まりのとき

  • 作者: 木下 昌輝
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/08/21
  • メディア: 単行本
なるほど、良い企画だと読んでいて思いました。戦国時代の出来事の十二刻前からのカウントダウン。ほぼ一日前からの関係者の動きを物語にした内容。あの日、あの時・・・右か左か、進むべきか引くべきか・・・その場、その時、人はいろいろな決断を強いられますが、本書はそうした歴史上の人物たちの決断、行動にいたるまでの物語をみせてくれます。
応仁の乱の混乱の中で、その後の登場人物たちにつながっている、というのもなかなかなもの。
いずれの短編もそれなりの緊張感を醸し出し面白く読ませていただきました。

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島田荘司の「盲剣楼奇譚」 [読書]

盲剣楼奇譚

盲剣楼奇譚

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/08/28
  • メディア: 単行本
大作です。金沢を舞台に、現在、戦前戦中、江戸時代初期の三つの時代のストーリ―が収められています。
正直、1回読んだだけでは三つの時代の関連性がよくわからないと思いました。現在において事件が起きて、その事件そのものはちゃんと最後に解決します。その真相も理解できるのですが、ストーリーの大部分を占める江戸期の話がどのようにラストの解決編と関連づけられているのかよくわかりません。
廓が舞台であり、そこで働く女性とそれに絡む男性、時代の背景からある種運目づけられたそれぞれの人生。登場人物たちはいずれも歯車がくるったがゆえにとてつもない厳しい人生を余儀なくされる・・・
物語のテーマはなんとなく理解できるのですが、細かいつながりのとこですっきりとこない・・・それぞれの時代の物語自体、きちんと成立しているので読む分には何の問題もないのですが・・・機会があったらもう一度読み返してみたいと思います。

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野口卓の「大名絵師写楽」 [読書]

大名絵師写楽

大名絵師写楽

  • 作者: 野口 卓
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/09/27
  • メディア: 単行本
写楽は誰だったのか?新説である。蜂須賀重喜、阿波徳島蜂須賀家のれっきとした殿様、お大名である。ウィキペディアによれば写楽は、蜂須賀家お抱え能役者、斎藤十郎兵衛というのが有力だとか。本書は能役者を抱えていたほうが写楽だという説を展開している。
結果論として、写楽が大名(本書では隠居後)だった、というのは歴史の現象面では辻褄があうような気もする。写楽を生んだ仕掛人、蔦屋重三郎が主人公として登場するが、写楽を生み出したのが重三郎なら、世の中から消し去ったのも重三郎。彼の思惑が写楽の運命を左右し、今現在も謎の人物として歴史に残す結果となっている。まったくの小説、フィクションとはいえないストーリーで説得力がある。写楽登場の「事件」にまつわる顛末を一定の緊張感をもって読ませる作品だ。「写楽は蜂須賀のお殿様」という説、広がると面白いなぁ。

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中山七里の「追憶の夜想曲」 [読書]

追憶の夜想曲 (講談社文庫)

追憶の夜想曲 (講談社文庫)

  • 作者: 中山 七里
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/03/15
  • メディア: 文庫
「悪魔の弁護人」https://www.tokai-tv.com/akumanobengonin/ としてドラマ化された本書。ドラマでは1話と2話で本書のエピソード完結となっているようです。まだ、ドラマを観ていないので、原作とどこがどのように違うのかわかりませんが、 贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫) 贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫) 恩讐の鎮魂曲 (講談社文庫) など、シリーズ作品を原作にして映像化を果たしたようです。中山先生の作品では、岬洋介シリーズは読んでいましたが、御子柴シリーズは初読。岬洋介のお父さん、岬恭平が出る作品、ということで読む前から興味津々でしたが、御子柴のキャラのなかなかなもので、ダークヒーローとしては存在感があるなぁと思いました。
ストーリーのことを話してしまうと完全ネタバレになってしまい、ここでは書けないのですが、ラスト数十ページの怒涛の展開は、前半部分で張られた伏線が一挙に明らかになるという読者にとっては満足のいく形となっています。
取り敢えず原作の余韻を残しつつ録画しているドラマを鑑賞してみようと思います。

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