土橋章宏の「いも殿さま」 [読書]
土橋先生のことなので、またまた痛快、ジェットコースター小説かと思いきや、本書は随分と落ち着いた内容。
本書の主人公は、江戸時代に実在した井戸平左衛門という人のお話。ちょっと調べてみたらすごい人なんですね。石見銀山周辺の天領を任され、隠居前の一仕事という感じで赴任したものの、銀山は荒れ果て、飢饉に苦しめられた領民が一揆をおこしかねないほど疲弊した土地を支配することになるとは・・・・
領民のために尽くした代官、殿様というお話・・・と書いてしまうときわめて平凡なストーリーに思えてきますが、実際にあった話と聞くと、現実もこんなもんだったのかもしれない、むしろ日常の延長に物語はあるのだろうななんて思えてくるから不思議です。なぜ「いも殿さま」と呼ばれたかは本書を読んでのお楽しみ。
土橋先生お得意のジェットコースター的シーンはむろんあります。影で代官一党を支える存在もいて安心。
著者のイメージから若干の違和感を感じつつ、本作はしんみりと読めました。
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