佐々木譲の「抵抗都市」 [読書]
もし、日露戦争で日本が負けていたら・・・おそらくは世界史、とくにアジアの歴史は今とは相当異なることになっていたかもしれません。その後の日中戦争、太平洋戦争もなかったかも。第二次世界大戦があったとしても、その様相は違った展開になっていたかもしれません。
本書はその「かもしれない」歴史下におけるお話。日露戦争は日本の勝利ではなくロシアが戦勝国という形で終息し、ロシア主導による同盟、外交権と軍事権をはく奪された保護国という立場に貶められているという設定。
進駐軍ならぬ統監府というロシアの出来先機関が日本を支配。日本、東京のロシア化が着々と進んでいる明治期から大正期という時代設定です。
肝心のお話は殺人事件をおう警視庁の若手刑事と所轄のベテラン刑事の物語。事件の真相を追う過程で、ロシアとの関係を維持しようとする勢力と日本の独立を果たそうとする勢力とのせめぎ合いが事件の背後にあることが明らかになってきます。
殺人犯をとらえるという絶対的な正義と、国を維持(日本の主権を回復しようとすることも含め)しようとする正義のとの対立が、物語の背景を貫くテーマだと思いますが、いずれの権力によっても一方が他方を押さえつけるという構造は全く不幸であるということを感じさせる展開でありました。こういう設定がドラマを生むということなのでしょう。
物語は含みを持たせた形で終わっています。この時代設定のまま数年後の”占領下の日本”で続編があるのでしょうか?
最近、国後島を間近にみて改めてロシアとの関わり方を考えてしまいます。あんなに近くにあるのに日本の領土として自由に行き来できないのは・・・・・・
by ハイマン (2020-07-27 22:40)
>ハイマンさん
お久しぶりです。コメントありがとうございます。
国家間の交渉、決め事と市井の人々の日常・・・永遠のテーマかもしれません。
by Ganchan (2020-08-19 15:46)