SSブログ

東野圭吾の「沈黙のパレード」 [読書]

沈黙のパレード

沈黙のパレード

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/10/11
  • メディア: 単行本
ガリレオシリーズも回を重ねるごとに重くなってきました。長編作品として上梓されることになったらかとも思いますが、単にトリックやセンセーショナルな犯罪にフォーカスするのではなく、登場人物の背景や心情を深堀したシリーズになってきたような気がします。シリーズは完結したようですが、新参者、加賀恭一郎シリーズに通じるものがあると思います。
本作では犯人のキャラクターは憎んでも憎み切れない存在として描かれています。司法の手ではどうしようもない存在。昨今の現実の事件の犯人像とも被るような気がして気分はよくないのですが、こうした存在に対し、被害者家族およびその親友、仲間たちの思うところはいかばかりかと想像される展開。結局のところ偶然が生んだ悲劇ともいえる結末が待っているという展開ですが、もやもやした収束は読後感としては決してよくなかった作品となりました。自分に置き換えて考えれば当然の結果ともいえますが・・・
ギブソンギターをつま弾くシーンは福山雅治で映像化されたときのサービスカットでしょうか?気になります。

nice!(23)  コメント(0) 

三浦しをんの「まほろ駅前狂騒曲」

まほろ駅前狂騒曲 (文春文庫)

まほろ駅前狂騒曲 (文春文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/09/05
  • メディア: 文庫
文庫化を期待していたら随分読むのが遅くなってしまいました。多田と行天の関係性やいままでの登場人物等、読み始めはうる覚えだったのが、読み進むうちにだんだん明瞭、明解になり、すっかりはまってしまいました。
むーん、こういう本が好きなのだということを自覚しました。面白かった。
自分だけはまともな人、と多くの人は思いがちであり、それをベースに世の中をみると本書のような世界観にはまるのではないかと思うのですが、読者としては非常に心地よい。人に振り回されながら、日々、緊張感とともにメリハリのある日常を過ごせたらと思わせる。リア充を画にかいたような日常。ある種憧れます。
間引き運転を糾弾する老人たち、無農薬野菜を生産、販売する怪しげな団体、それを阻止しようとする街の有志(いずれも裏があり、一筋縄ではいかない人たち)が織りなす狂騒をバックグランドに行天の娘を預かるというメインストリーが違和感なくかみ合って物語として完成しています。
・・・とまあ理屈は抜きに面白いのでぜひ読んでみて!と薦めたくなる作品です。

nice!(20)  コメント(0) 

天野純希の「雑賀のいくさ姫」 [読書]

雑賀のいくさ姫

雑賀のいくさ姫

  • 作者: 天野 純希
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/11/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
天野先生といえば「風の谷の守り人」( 剣風の結衣 (集英社文庫) )でも少女が活躍する作品がありましたっけ。今回は座礁した南蛮船を接収、自らの船として世界の海で自由に生きることを夢見た雑賀党鈴木孫一の娘が主人公の話。村上水軍や島津の巴姫の誘いにのって九州侵攻をもくろむ倭寇の親玉、林鳳と戦うことになるというストーリー。
天野作品に限らず、"姫"様が主人公の場合、とにかく強く、決して負けないキャラクターが多く(読者もそれを期待している節がある)、本作もその期待に十分に応えています。混沌として先行きが見えない時代の気分にあって、こうした姫キャラが事態を打開してくれる!という話は時代が要請しているのかもしれません。
本作の登場人物、実在の人と架空の人が混在、(林鳳という倭寇の親玉は実在したらしい)その分、臨場感が増した作品になりました。
姫キャラ・・・嫌いではありません。

nice!(25)  コメント(0) 

伊東潤の「峠越え」 [読書]


峠越え (講談社文庫)

峠越え (講談社文庫)

  • 作者: 伊東 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 文庫

盟友として歴史に刻まれている織田信長と徳川家康の連合。織豊の時代から江戸幕府開府にいたるまで、小説やドラマで信長と家康は義兄弟のような関係で描かれていることもあって、互いの利益を前提とした信頼の上に築かれた強固な関係として認識されてきたのですが、最近はそのような解釈とは別の見方があるらしい。信長は家康を邪魔に思っていた?たしか垣根涼介さんの作品でも信長が強大化する家康を亡き者するという計画があったけ( 信長の原理 )。この見方は本書「峠越え」の方が先ですが・・・

信長からみれば家康のポジションは自身の政権構想を考えていく上で確かに邪魔な存在になったかもしれない。秀吉が家康の扱いに苦慮したように、秀吉台頭前の政治バランスから考えるといかにして取り込むか、排除するか?という発想にいたってもおかしくはない。

本書では、信長の意向を受けた”腹心”の光秀が本能寺の変を起こすことで家康を抹殺するというシナリオが描かれているが、いまだに真相明らかではない本能寺の真実を解き明かす解釈の一つとして面白いと思う。本書のシナリオを裏付ける古文書なんかが出てくる可能性もゼロではないかも・・・家康の前半生のクライマックスである伊賀越えにいたる歴史のダイナミズム、面白く読ませていただきました!


nice!(24)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。