岩井三四二の「歌え、汝龍たりし日々を 始皇帝紀」 [読書]
タイトルにある通り、秦の「始皇帝」の一代記です。
李斯という側近の目からみた中国統一までのいきさつと滅亡までを描いた大河小説です。
中国を舞台にした小説だけに、時間距離と物理的距離が読めなかったり、各国間での戦の描写=数十万人が相争うという展開は、三国志に代表されるスケールの大きさにつながるものがあります。
中国初の統一王朝であり、初の皇帝に即位した、という歴史的事実を踏まえ、フィクションで紡ぎながらの一代記は、下の者が成り上がっていく下剋上的な話とは違い、話自体は落ち着いているといえるのですが、陰謀渦巻くい陰湿な争いや暗殺、謀殺など、全体としては暗いトーンといえないこともない。
国のトップに立つ者の孤独感や猜疑の心、苦悩等を側近の立場から客観的に描いているからか、抑揚のない感じがないでもありませんが、むしろこの方が良かったのかもしれません。
秦の滅亡に伴い劉邦や項羽が活躍する時代に突入することになりますが、本書の最期の部分で項羽と劉邦が登場。もしかしたら岩井先生、続編は岩井版の「項羽と劉邦」でしょうか?
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