五十嵐貴久の「こちら弁天通りラッキーロード商店街」 [読書]
地方の人口減少、高齢化、そして商業振興をテーマにしたお話です。
シャッター通り商店街は全国どこでも見られる傾向です。郊外の大型店に顧客を奪われ、昔ながらの市街地には閑古鳥が鳴いている。私も地方出張が多いのですが、こうした商店街はそこそこ大きい街でもみられる光景です。県庁所在地といっても中心街といわれるところはなんとなくさみしい感じがするところが多い。そして目立つのが全国チェーンの居酒屋とコンビニです。地元資本による地元の商店が自立して地元の経済を回しているところは本当に少ない。本書は、ある種、日本の地方、郊外の街の「今」を映し出した作品といえるでしょう。
「ぽっくり逝きたい」と望んでいる老人たちが物語のキーマンとなります。高齢社会の縮図のような舞台設定で繰り広げられる展開は、たんたんとしていて盛り上がりに欠けるという難点はありますが、自分自身の老齢期に至ったとき、この物語に登場する老人たちのように達観できるか?そんな心配をしてしまいました。たんたんとしているだけにリアリティに富んだ作品のような気がしています。
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