葉室麟の「刀伊入寇 藤原隆家の闘い」 [読書]
清少納言、紫式部が活躍した平安時代が舞台のお話です。
平安朝最盛期の頃といってもよいでしょう。本書の主人公は藤原隆家。あの有名な道長の甥にあたる人です。甥と叔父の関係でも権力闘争はつきものといった当時の風潮は後の武士の時代の権力闘争は異なり、直接的に殺めるといった行為には及ばないのですが、逆に呪いをかけたり、左遷したりといった陰湿なものであり、当時の貴族階級もなかなか大変だったと思うわけです。
さて、本書のタイトルになっている「刀伊の入寇」ですが、これはあまり知られていないのではないでしょうか?当時の中国北部の女真族が刀伊であり、朝鮮半島から日本にかけてたびたび略奪等の行為を行ったことが史実にもあるようです。
その侵略に対し、貴族である藤原隆家が在地の武士を含めた日本防衛軍を指揮し、撃退したことが本書のクライマックスとなっています。
きらびやかな貴族社会にあって、藤原隆家という人は大変気概のあった人物のようで、道長も恐れたという人物。面識のあった紫式部はかの「源氏物語」の光源氏のモデルとして隆家をみていたというような記述もあります。本書の帯には「光源氏の合戦物語」(記憶が定かではありませんが)とあったような気がします(だからこそ本書を手に取ったいうわけで)。
物語の前半は朝廷内の権力闘争、後半で刀伊との争いになりますが、複雑で陰湿な貴族社会を描いた割にはわかりやすい展開。刀伊一族の日本入寇の理由、一族の絡みが今一つ腑に落ちないところもありますが、私にとっては馴染みのない時代ではありますが、結構読み応えのある本でした。
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