高村薫の「冷血」 [読書]
小説や映画、ドラマの世界で人気を博した刑事や探偵はあまたおりますが、本書の警察側の主人公である合田雄一郎は原作者である高村さんがしばらく警察ものを書かなくなったことも手伝って、世間からは忘れ去られた存在になってしまったのではないでしょうか。スニーカー刑事・・・というとアクションものの刑事ドラマを思い起こさせますが、決してそうではなく、彼の警察という組織の中でいきるある種の自己主張というか、そんな感じのスニーカーであったような気がします。うまく書けませんが・・・地味な存在でしたが、それなりにアクティブであって、深刻で陰惨な事件の中にあって、なぜかほっとする存在でもあったような気がします。
その合田雄一郎が帰ってきた作品。45歳という設定で再登場した彼は、レザーのスニーカーを履いている。部下が7人もいる本庁捜査一課特殊班の係長として帰ってきました。
淡々とした日記のような記述で終始している本書の中の合田は、年を重ねた上の落ち着きなのか、冷静そのものであり、犯罪そのものを客観的に把握しようと努める雰囲気を醸し出しています。
読者の方も年を取ったせいか、同じように客観的な見方、むしろ諦めに近い部分もあるのですが、時代を感じます。
最近の新宿鮫の鮫島のような雰囲気もありますなぁ。
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