荻原浩の「母恋旅烏」 [読書]
大衆演劇の一座を舞台にしたお話。昔からこの手の話は小説やテレビ、映画になりやすいのだけれど、この本、今までの作品にありがちな悲壮感というか暗さを感じさせないストーリーになっています。寛二という座長の次男坊の視点で「語られている」という設定がそうさせるのでしょう。
前半は食えない一座(家族)が生活のために始めた「レンタル家族」サービス業で訪れた客先でのドタバタ、後半は旅芸人一座に復帰してからの感動話になっていて、登場人物のいい加減さと人の好さ、そしての奥底にある役者魂、義理と人情、そして家族の絆が描かれるという展開で、登場人物たち一人ひとりの背景や人生を深くえぐることなく、語り手である寛二の視点であっさりと語られます。
同じようなモチーフで映像化された傑作、「淋しいのはお前だけじゃない [DVD]」のように、ある種、アングラ的で現実社会とからの逃避、別世界で生きようとしていた人々の話とは異なり、軽妙でリアリティにあふれた作品といましょう。また、家族の話ですね。結構読ませます。
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