真保裕一の「猫背の虎 動乱始末」

猫背の虎　動乱始末

• 作者: 真保 裕一
• 出版社/メーカー: 集英社
• 発売日: 2012/04/05
• メディア: 単行本

真保裕一の歴史小説第三弾。江戸時代は幕末、安政の大地震直後の江戸市中で活躍する同心、大田虎之助が主人公の物語。真保さんお得意の「小役人シリーズ」の”最新作”といってもよいのでは。歴史小説第一弾の「覇王の番人(上) (講談社文庫) 」では明智光秀、「天魔ゆく空 」では細川政元と、いずれも為政者の側の人物を扱ったもの。「覇王の番人」では新しい明智観を、「天魔ゆく空」では細川政元という一般には無名の武将の一生を描いた。それなりに読みどころがあって、歴史小説というジャンルに本格的に取り組んだ真保さんの意気込みを感じたわけですが、本作を読むにいたって、やはり真保さんの真骨頂は「小役人」ではないかと思った次第。江戸モノにしては、やや硬い感じが気になりますが、シリーズ化されればもっとこなれてくるのでは？という印象です。

最近の真保さん、歴史・時代物に傾倒しているようです。本作は前2作とは違って事件、推理話がきちんと入っています。昔からの真保ファンとしてはうれしいこと。大河ドラマ的な大作も結構ですが、こうしたこじんまりとした話もいい。次の歴史モノはどんな趣の作品になるのでしょうか？期待大です。 

タグ：南町奉行所 安政の大地震 真保裕一 同心