北森鴻(浅野里沙子)の「邪馬台国~蓮杖那智フィールドファイルⅣ」 [読書]
2010年1月に急逝した北森鴻氏の遺作です。作品が完成する前に亡くなられたこともあり、公私ともにパートナーとされる浅野里沙子氏が引き継ぎ、完成させたという本書は、「邪馬台国」という日本史にとって最大の謎、歴史的なミステリーに挑戦した意欲作でもあります。
邪馬台国がどこにあったか?という視点ではなく、「民俗学的アプローチから邪馬台国に迫る」という新たな挑戦は、作家ならではの自由な発想、考え方から、もしかしたらそうかもしれない、というだけの説得力はあったような気がします。もっとも、日本の古代史、黎明期の歴史や、古事記、日本書紀などの内容を理解していないと、小説の中で語られているヒントや謎に迫る逸話がよくわからない、といううらみもあります。そういう意味では難解な小説でもありました。
北森さんが発表してきた蓮杖那智シリーズの登場人物はもとより、冬狐堂シリーズの宇佐見陶子などの人気キャラ総登場の展開に、ファンとしてうれしい限りだったのですが、これはテーマの大きさもさることながら、北森氏が亡くなる直前まで書いていた本作にご自身で思うところがあったのか?
気になる作家さんの一人だっただけに今後新作が出ないというのは本当に寂しいかぎりです。
ご冥福をお祈りいたします。
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