池井戸潤の「下町ロケット」 [読書]
日本の中小企業が日本の産業、特に製造業を支えているのは周知の事実です。仕事柄、中小企業の社長さんにお話を伺う機会が多いのですが、確かな技術力とプライドを持って仕事をされている方が多い。リーマンショック以降の景気悪化、最近の急激な円高で中小企業は青息吐息ですが、そんな中で世界に出しても恥ずかしくない技術、先端技術を持っている会社はたくさんあります。積極的な事業展開を進めている会社は、海外へ需要を求めようとする会社もあり、世界の産業を支える日本の中小企業、という図式が遠くない将来、現れるかもしれません。もっとも、いわゆる零細といわれる企業規模の会社が多いのも事実であり、多くは淘汰される運命にあるのかもしれませんが・・・
本書が話題になった時、大阪の町工場の人たちが打ち上げた衛星、「まいど号」をイメージしていましたが、読んでみると違いましたね。町工場といっても年商100億円、従業員200人と製造業では中小企業に分類されますが、かなり大きい会社という印象。そういう意味でドラマ性としてはやや肩透かしをくらった感じでしたが、日本を代表する大企業と特許を巡って争うストーリーは面白かった。大企業vs中小企業という基本プロットに、大企業の出世争いや中小企業内の社長と若手従業員との確執などのエッセンスを入れながら、次はどうなる?的な期待感を持たせる構成になっています。
池井戸さんの作品は乱歩賞受賞作品「果つる底なき (講談社文庫) 」以来でしたが、こんな作風だったっけ?と思わせる作品。お勧めの一冊です。
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