万城目学の「偉大なる、しゅららぼん」 [読書]
人間には失われた力があるといわれています。おそらくは人間が文明という名の道具を手にし、便利さを享受するようになってそうした力は必要なくなってきたのではないか?なんて想像するわけですが・・・・本書はそうした失われた能力をいまだに守り続け、継承している一族の話です。
タイトルの「しゅららぼん」とは何か?ここで詳しく書くとネタばれになってしまうのでやめときますが、ある「力」に関係したものとしておきましょう。琵琶湖から授かったという「力」。昔は日本全国の湖周辺に、こうした「力」を持った「湖の民」がいたそうですが(「力」はそれぞれ微妙に違っていたようですが)、今や生き残っているのは琵琶湖周辺の日出一族と棗一族という設定。日出一族の「力」と棗一族のそれとはちょっと中身が異なり、琵琶湖周辺で千年近くに渡って覇を競っていたという背景があって・・・ようするに仲が悪いわけですが・・・ここに第3の「力」を持った人物が登場し、物語はクライマックスへと向かう、という展開になっています。
とはいっても物語の舞台は現代。主人公は高校1年生であり、「力」を守り継承するという話でありながら、現代に生きる「力」を持った登場人物たちの言動や行動は、千年単位で語られる重さとは無縁のトーンとなっています。登場人物たちのキャラも立っていて良い。ジャンルとしてはファンタジーということになるのでしょうが、「ナルニア物語」みたいな(唐突ですが)海外のものとは違って、日本的、かつクールでかっこいいファンタジーではないかと思うわけです。
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