ベン・マッキンタイアーの「ナチが愛した二重スパイ」:英国諜報員「ジグザグ」の戦争 [読書]
先週、ご紹介したジェームズ・ボンドの新作に次いで今週もスパイのお話です。
もっともこの本はノンフィクション。第二次世界大戦時、イギリスとドイツの二重スパイであったエディ(エドワード)・チャップマンという実在の人物の半生を描いた本です。
事実は小説よりも奇なり、と申しますが、チャップマンがスパイに仕立てられていくプロセスは、そこいらの安っぽい小説なんかより面白い。主人公チャップマンは正真正銘のイギリス人でもともとは犯罪者。ついには捕まってイギリスのジャージー島の刑務所に服役していたのですが、第二次世界大戦勃発後、ドイツ軍がジャージー島を占領、彼の犯罪者としての”功績”に注目したドイツの諜報機関がスパイにスカウトしたことで彼のスパイ人生がスタートします。教育・訓練の後にイギリスに潜入。ところが潜入直後、自ら情報機関MI5に名乗り出て、二重スパイとして働くことを宣言します・・・
グラウマン博士というドイツでのチャップマンの教育係が、異常なほどチャップマンを可愛がり、父親のような存在になっていく様は小説そのもの。グラウマン博士に信頼され、愛され、ドイツのために働くことにグラウマン博士も、おそらくはチャップマン自身も疑いを抱かなかったにも関わらず、なぜ、二重スパイとなることを宣言したのか?その辺の心境の変化がいまいち読み取れなかったのですが・・・国家に忠誠を尽くすなんてことではなく、いかにこの局面を生き抜くか?戦争という国家間、イデオロギーのぶつかり合いの中で、一犯罪者が生き抜くための手段として二重スパイに活路を見出したのか?おそらくはそんなことだろうとは思うのですが・・・
後に007シリーズを手がけることになるテレンス・ヤング監督との交流や当時海軍情報部に在籍していたイアン・フレミング、007に新兵器を供給するQのモデル等、007シリーズというフィクションが誕生するネタ元みたいな話に、へぇ~と関心しつつ読了しました(決して読みやすいとは言いがたい本ではありましたが)。
面白そうですね。
とはいいながら007シリーズよりもチャーリー・マフィンシリーズの方が好きだったりするわたしです。
by U3 (2009-06-15 18:26)