梓澤要の「光の王国 秀衡と西行」
奥州藤原氏三代目の藤原秀衡と歌人として有名な西行のお話です。西行は、俗名佐藤義清(さとうのりきよ)といい、秀郷流藤原氏の流れを組む武士。同じ秀郷流を遠祖と称する奥州藤原氏とはいわば遠い親戚同士なのですが、本書では、その事実を知らずに、時の権力者藤原頼長から奥州藤原氏の動向を探るべく平泉に派遣されたことになっています。双方が同祖であることを知るのは、平泉で秀衡と関わることになってから。西行は二度に渡って奥州藤原氏の本拠地である平泉を訪れたのは史実のようで、本書はその史実をベースにしたものです。
物語は奥州藤原氏二代目の藤原基衡が当主の時代。西行、秀衡ともに二十代の若者。初代清衡が開府した平泉は発展途上のさなかにあり、理想郷の実現に向けて活気あふれる街の喧噪のなか、若き秀衡と西行の日々が描かれています。
藤原秀衡といえば奥州藤原氏最盛期を築いた人。北方の王者といわれ、ドラマなどでも何度か登場したことがありますが、その多くはいずれも晩年(源義経との関係性によって登場することから)の御姿。滝沢修、萬屋錦之介、高橋秀樹や渡瀬恒彦、ちょっと変わったところでは京本正樹というのもありましたが、二十代のはつらつした感のある若武者秀衡は初めて。テレビや映画になったら誰が演じるのか気になります。
理想郷、ユートピアとして描かれている平泉。それを舞台にした本書はある種のファンタジー作品ともいえるかもしれません。
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