赤川次郎の「東京零年」 [読書]
かつて「三毛猫ホームズ」シリーズなどで一世を風靡し、今や大御所的なキャリアをお持ちの赤川先生の長編作品です。
最近ではNHKテレビでも放送された「鼠、江戸を疾る (角川文庫)」シリーズなど、時代モノもお書きになっているようで、キャリアに応じて手掛けるジャンルも広くなっているようです。
さて、本書ですが、単行本で500ページ前後の長編でありながらあっという間に読めてしまうという点で赤川作品たらしめるところがあって、実に読みやすい。文章が簡潔で頭に入ってきやすい。ストーリー展開もメリハリがあって分かりやすい。最初はその分厚さから少し構えて読み始めたのですが、気が付いてみればあっという間に読了していました。
そもそもこの作品、何かの伏線があったの?と思わせるような記述が多く(と妙なところにこだわってしまうのですが)、ところどころで違和感を感じた次第。
本書の舞台は現在の日本ですが、検察や警察が市民を圧迫している警察国家という設定。国家に逆らうものは全て検挙の対象という状況にあって、それに抗う人たちと絶大な権力を持つ検察官(とその家族)、警察官との攻防を描いているものの、話は進むにつれて登場人物たち双方がやりとりする“情”に流されて?最後はみな善人になってしまうという結末は少々残念でした。
テーマの重さ(⇒実は現実社会において同じような状況に進んでいないか?)に対し、ストーリーは2時間ドラマ的な流れ。そんな印象を強くもった次第です。もしかするとそのように読んでしまった私の力不足なのでしょうか?
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