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堂場瞬一の「独走」 [読書]

独走

独走

  • 作者: 堂場 瞬一
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2013/10/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
ワールドカップが開幕します。そして、2020年には東京でオリンピックが開催されることになりました。日本国民が一時的に“民族主義者”に変わる瞬間です。センターポールに“日の丸”が上がることに涙し、“君が代”を口ずさむ・・・こうしたある種の一体感は、普段の日本人にとってはあまり意識するものではないかもしれませんが、マスコミがこぞって祀り上げる“国威発揚”に身を委ねることで興奮し、喜び、嘆き、悲しむといった感情を発露させる場、時間なのでしょう。
以上は観戦する側の立場からの意識と行動です。
では、選手そのものはどうなのか?ワールドカップやオリンピックの選手に選ばれることは選手にとっても名誉だということはあるでしょう。選ばれることはすなわち一流の証でもあります。そして、一流の選手であればあるこそ、世界レベルで自分の実力を試してみたい、できればトップに立ちたいという気持ちは強いのではないでしょうか。
今、日本では世界で勝つため、オリンピックで勝つために国費を注ぎ込む方針でいるといいます。有望な選手を集め、強化する体制を国家レベルで行うというものです。その成果は様々な種目で成果が上がりつつあるということですが、将来的にはこのシステムをより強化していく方向にあるようです。
その形が本書で描かれている強化選手制度、SA制度であり、それを運用しているのはスポーツ省という役所です。現在の日本の近未来かもしれません。選手強化のために税金が使われます。また、一流の指導者が招かれ、科学的根拠に基づいた指導システム、ウェアや器具などが惜しげもなく投入されます。オリンピックでのメダル獲得数の倍増がその目標でもありますが、その中で培われた指導法やシステムが日本の新たな輸出産業になるというメリットもある。
こうした前提の中で傍目には強化選手に選ばれた人間はさぞや良いだろうと思いがちですが、果たして選手はそのうなのか?本書はSAに選ばれた陸上選手を主人公にしたお話ですが、理想的にみえる国家戦略の中に組み込まれた選手が行きつく先は?そして彼が目指していたものは・・・・日本の近未来を見ているようで実に面白い展開でした。そして現実もそれに近い形で進んでいるかもしれない・・・お薦めの一冊です。  

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