池波正太郎の「蝶の戦記」

蝶の戦記〈上〉 (文春文庫)

• 作者: 池波 正太郎
• 出版社/メーカー: 文藝春秋
• 発売日: 2001/12
• メディア: 文庫
  

  蝶の戦記〈下〉 (文春文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫

甲賀忍者「於蝶」の活躍を描いた歴史エンタテインメント小説です。「於蝶」は女忍者、いわゆるくノ一です。甲賀の杉谷信正に仕える忍者で、近江の豪族六角氏（観音寺どの）を主と仰ぎながら、上杉謙信のために諜報活動を展開、武田信玄や織田信長など、上杉にとって敵となる大名とそれに雇われている忍者との死闘を描いています。

くノ一ということもあって、色っぽいシーンが何度も出てきて男子としてはなかなかありがたい作品です。時代は川中島の合戦、織田信長の上洛、浅井長政と信長が激突した姉川の合戦など、戦国時代真っ盛り。忍者が最も活躍した時代でもあります。

それにしても、本作で上杉方についた於蝶を始めとする杉谷忍（しのび）が武田信玄に対した際、武田方の忍の妨害にあってろくな成果をあげられませんでした。まあ当然といえば当然でしょう。何せ武田にはあの「お江」を始めとする草の者たちがいたのですから。くノ一のお化けみたいな存在、伊佐木でも武田の草の者には歯が立たなかった。この辺りの記述は本書では詳しく書かれていませんが、おそらくそうであったのだろう、と池波作品、真田太平記ファンとしては想像が働くわけです。

忍者同士の争いの場面は、まるで白戸三平の「カムイ外伝 (1) (小学館文庫)」や横山光輝の「原作愛蔵版 伊賀の影丸 第1巻 若葉城の秘密 (1) (KCデラックス)」を読んでいるかのよう。エンタテインメント作品としてお勧めです。

 

 

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