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奥泉光の「モダールな事象」桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 [読書]

なんとなくおしゃれなタイトルでしょう。「モダール」とは、本書の解説によると、「・・・たとえばアクチャルなものに対して様相化されたものとか、様相論理学では、can・・・とか、may・・・というかたちの、現実ではなくて予測とか反実仮想といった非事実の言説を、モダールな言説といったりするんですが・・・(中略)、あと音楽用語でも、ジャズのモードの形容詞形・・・」ということらしいです。

わかったようなわからないような解説ですが、本書の内容といえば、タイトルからは想像のつかない連続殺人事件のお話。関西にある女子短大で国文学を教えている助教授桑潟幸一こと桑幸は、京都の出版社からある無名の作家の遺稿の解説文の執筆を依頼されます。その作家はかの太宰治とも接点があるという人物。仮にも国文学、しかも太宰を研究していた桑幸にとって、その作家の名前は全く知らない存在でしたが、瀬戸内海に浮かぶ小島で偶然発見されたという経緯と、出版社からの強い要請(予想外のギャラの提示もあったのですが・・・)に応じる形で、執筆することになります。
その遺稿は後に出版されベストセラーになりますが、桑幸に執筆を依頼した編集者が殺される至り、桑幸は不思議な事件に巻き込まれていきます。

物語は、桑幸が巻き込まれていく不思議な体験で進むストーリーと、ジャズシンガーでフリーライターでもある女性とその元連れ合いが「元夫婦刑事(もとめおとでか)」として事件の真相解明をたどっていくというストーリーがパラレルで進行していきます。

元夫婦刑事のストーリーは謎解きという意味でわかりやすい展開で進行しますが、桑幸がメインのストーリーは、現実と過去が入り乱れ、桑幸の幻影や妄想が錯綜するといった展開で、正直、かなり混乱しました。事件の本筋というか、殺人事件そのものの背景や動機、そして犯人は誰か?というところははっきりするのですが、その事実と事実の間に存在する不可解な描写を絡ませながら読むのにやや骨が折れました。本文500ページの大作。混乱を避ける意味でも休日等に一気に読むことをお勧めします。

モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)

モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)

  • 作者: 奥泉 光
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/08/05
  • メディア: 文庫

 

 


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