五十嵐貴久の「交渉人 遠野麻衣子の最後の事件」 [読書]
五十嵐貴久の「交渉人」の続編です。テレビ化された米倉涼子の「交渉人」とはまったく関係ありません。
オウム真理教を思わせる新興宗教団体が引きこすテロ事件を、前作も登場した交渉人遠野麻衣子が立ち向うというストーリーです。たった数個の時限爆弾で、東京は大混乱に陥ります。9.11、ニューヨークを襲ったアルカイダのテロ攻撃は、旅客機をハイジャックして突っ込むという手段で全世界に衝撃を与えましたが(この攻撃は、トム・クランシーの小説を思わせるものでした。日本の元自衛官が操縦する日航機をアメリカの国会議事堂に突っ込ませるというお話です)、本書では、たった2個の爆弾を爆発させただけ。事件としてはまったく地味ながら、十分にありえるだろうな、と思わせる展開。テレビ局のなんの根拠もない報道が、またたく間に不安を募り、デマが飛び交い、東京はパニックに・・・収集がつかなくなります(ちなみにこのテレビ局はTVJという架空のテレビ局。五十嵐作品では「TVJ (文春文庫 い 71-1)」という作品があります。内容的には直接、リンクしてませんが・・・)。
携帯電話の契約数が1億を超え、インターネットが普及している現代社会において、ほんの少しきっかけを与えるだけで、社会秩序が崩壊してしまうという流れは、ある意味、直接的な攻撃以上に”効果的”です。
作品としては、前作の「交渉人 (幻冬舎文庫)」の方が正直いって面白かったと思います。本作での事件解決に至るまでの遠野麻衣子の活躍には正直違和感あり、ですが、ストーリーそのものはきわめて現実的。5点満点で2.5点といったところでしょうか。
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