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村上龍の「オールド・テロリスト」 [読書]


オールド・テロリスト

オールド・テロリスト

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/06/26
  • メディア: 単行本
 
 
 
 
 
本書を一言で表すとしたら、「閉塞した現代日本を憂えた老人たちが立ち上がった!」ということでしょうか?これだけ書くとなにやら底の浅い小説のようにも思えますが、現代の閉塞感というものは考えようによっては相当なものであり、その状況をなんとか打開しようとする気持ちはよく大いに同意するところです。
しかしながらその手段がテロ?ということになると話は違ってくる。「決してテロは許さない」という政治的コメントや思想信条、民族や宗教間の対立といったことではなく、つまり理性的なものではなく、全く突然に無慈悲に、無差別に人が殺されるということにおいて少なくとも私自身は耐えられないだろうと思っています。
そうした気持ちや混乱を生むことがテロの効果なのでしょうが、いくら自分の主張を通そうとしても手段としてのテロはあり得ないのではないか?
本書の主人公であるセキグチという人物に対しては世代的にも、生き方そのものについても相当気持ち的にだぶるところがあって、彼のテロ遭遇後の情けない行動に(おそらくはPTSD?)大いに同情しつつ、物語的には「もっとしっかりせい!」と叱咤しつつ読み進めたのですが、実際にテロにあったらそんなもんだろうというのが正直なところ。全く用をなさない人間に成り下がってしまう自分を本書の中にみてしまいました。
テロリストの老人たちはそんな気持ちなど凌駕し、目的のためにまい進するわけですが、私にはとてもとても・・・それにしてもテロリストたちが描いた日本におけるテロの実行による影響は何とも計り知れず、また、いとも簡単にできそうだというところも妙に納得、怖さを感じてしまいました。
ホント、主人公セキグチにまったく同情、入り込んでしまったため、読後感は最悪の精神状態でした。 
 


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