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島田雅彦の「人類最年長」 [読書]

人類最年長

人類最年長

  • 作者: 雅彦, 島田
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/02/03
  • メディア: 単行本
いにしえより、不老不死は人類の夢、特に為政者、独裁者、権力を持つものにとっては強かったといわれています。本書の主人公はそれを実現した男のお話です。物語冒頭、主人公は159歳であることが明かされます。
江戸時代末期、万延年間の生まれ。明治、大正、昭和、そして平成を生き抜いた男の人生。不老不死を願ったわけではなく、人よりちょっと成長の度合いが少ないという“症状”でいつしか100歳を超え、未だに死なないでいるという男。
彼の人生は日本の近代化と成長とともに歩んできたわけですが、われわれが知っている「栄光の日本」?とは裏腹の日本の現実がリアルさを持って描かれています。
印象的だったのは時代とともに変わる価値観。今の先進国の国民でござい、という意識や価値観はついこの間成立したようなもの。そうした現実を突きつけられたような気がします。
むろんフィクションなので本書にかかれていることがすべてではないのですが、明治維新以降150年の歴史の中である局面を描いていることは間違いないと思わせる内容となっています。
ある男の生活史、時代に応じて生きる術を探し続けて男の人生。全体としては暗いトーンですが、日本の現代史に間違いなくあったシーンであることは間違いないでしょう。

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