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佐藤巖太郎の「会津執権の栄誉」 [読書]


会津執権の栄誉

会津執権の栄誉

  • 作者: 巖太郎, 佐藤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/04/21
  • メディア: 単行本

会津に400年もの間、覇を唱えた芦名家の滅亡までの数年間を描いた作品である。伊達家との最終決戦、摺上原合戦にいたるまでの芦名家内部の混乱をさまざまな立場にいる人の視点から描いている。

伊東潤先生から言わせれば「負けるべくして負けた」という感じ。こんな感じでは勢いのある伊達政宗には勝てないという状況ながら、家の存続に力を尽くした登場人物たちの無念のほどはいかばかりにと思ってしまう。

もし、芦名家がほんの少しの間命脈をたもっていたら、秀吉の奥州仕置の形も変わり、特に伊達政宗の処遇がどうなったか?というのは気になる。

まあ、芦名最大の同盟関係にあった佐竹家も時代を読み誤った口。そういう意味で時代の趨勢に押し流されてしまったという感じかもしれない。


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有栖川有栖の「鍵の掛かった男」 [読書]

鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)

鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 文庫
火村英生シリーズの長編本格ミステリ。文庫版で700ページの大作です。
読み応えがありました。ある男の半生をなぞるという形式をとっているため、その分、ページがかさんだことになったわけですが、決して苦にならなったです。読みやすいということもあったと思いますが、切なさとやるせなさが混在した半生に少々引き込まれた感じです。
事件の真相からすると実にありがちな動機があり・・・となるわけですが、そのありがちなものとのギャップがなんともいえない余韻を残す結果となっているような気がします(これから読む人にネタバレにならないように書くと抽象的になってしまいます・・・)。
久々の本格派、堪能いたしました!

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島田雅彦の「人類最年長」 [読書]

人類最年長

人類最年長

  • 作者: 雅彦, 島田
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/02/03
  • メディア: 単行本
いにしえより、不老不死は人類の夢、特に為政者、独裁者、権力を持つものにとっては強かったといわれています。本書の主人公はそれを実現した男のお話です。物語冒頭、主人公は159歳であることが明かされます。
江戸時代末期、万延年間の生まれ。明治、大正、昭和、そして平成を生き抜いた男の人生。不老不死を願ったわけではなく、人よりちょっと成長の度合いが少ないという“症状”でいつしか100歳を超え、未だに死なないでいるという男。
彼の人生は日本の近代化と成長とともに歩んできたわけですが、われわれが知っている「栄光の日本」?とは裏腹の日本の現実がリアルさを持って描かれています。
印象的だったのは時代とともに変わる価値観。今の先進国の国民でござい、という意識や価値観はついこの間成立したようなもの。そうした現実を突きつけられたような気がします。
むろんフィクションなので本書にかかれていることがすべてではないのですが、明治維新以降150年の歴史の中である局面を描いていることは間違いないと思わせる内容となっています。
ある男の生活史、時代に応じて生きる術を探し続けて男の人生。全体としては暗いトーンですが、日本の現代史に間違いなくあったシーンであることは間違いないでしょう。

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