堂場瞬一の「闇の叫び」 [読書]
このシリーズ、堂場先生のシリーズ作品の中で最もお気に入り。主人公大友がなんとも良い。シリーズも9作目の本書は息子優斗の高校進学とともに終わり?・・・事件解決の余韻にひたって読んでいた私にとっては衝撃のラスト(ネタばれ?)。
今回の作品は親子関係が主題。暗い面にフォーカスがあたって正直かなりつらい展開ながら現実にありそうな展開。犯人の人生、心情を思いつつ、刑事である前に一人の親として犯人に向き合った大友は迫力がありました。
息子が親元を離れることで、本作の基本設定が崩れるわけで、やはりシリーズ完結なのか?読後はそれが非常に気になりつつも何とか次回作、もしくは他のシリーズへのゲスト出演も期待したいと思っているのですが無理でしょうか?
佐々木譲の「廃墟に乞う」 [読書]
今更という感じ。直木賞受賞作品です。
デジャブ感に襲われながら読みました。何回目?連作短編集で最初の作品「オージー好みの村」は確かテレビドラマになったような気がします。
どなたが主役だったか忘れたのですが、原作のテイストとは別物に仕上がっていた印象があってちょっとがっかりした記憶があります。
淡々としつつ、緩やかにかつ確実に事件の本質に迫っていく感じがいい。ゆったりと読める感じで、心地よい作品です。休職中の刑事ということで、ガツガツしていない展開がそう思わせるのかもしれません。やはりリフレッシュは必要なのかも、読者にも。
佐々木裕一の「赤坂の達磨 公家武者 松平信平13」 [読書]
本作については、実在の人物が主人公、しかも五摂家の一つである鷹司家から武家になったという異色の経歴を持つ人物の小説ということもあって、いつかは読んでみたいと思っていました。
もっとも文庫書下ろし系の作品は人気があってなかなか第1巻を入手するのは難しい、ということで、たまたまあった13巻を手に取った次第。史実では徳川家光の正室となった姉を頼って江戸に下向したということですが、そのプチ情報だけで途中からでも十分に楽しめる作品でした。
内容はというと、まあ、ひと言でいえば「水戸黄門」ですな。もともと五摂家出身であるあるだけでなく、将軍の正室の弟であり、妻は紀州徳川家の娘・・・「将軍家所縁の方だ」というセリフで悪人たちは一度躊躇するも、「ええい、斬れ!斬れ!」と逆上し、結果、成敗される。ピンチ~という局面では忍の技を持った家臣、取り巻きが助けてくれる・・・
いわば痛快時代劇(作者の佐々木さんはテレビの痛快時代劇の大ファンであったそうな)の典型ともいえる構成で読者としては安心です。
かつての時代劇のヒーロー不在となった昨今。こうした新しいキャラでテレビ時代劇復権もあり得るかも。白い狩衣をきて、「麿は・・・」という主人公はちょっと変わっているけど新しいヒーローとして存在感があると思うのですがいかがでしょうか?