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矢野隆の「鬼神」 [読書]

鬼神

鬼神

  • 作者: 矢野 隆
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/03/08
  • メディア: 単行本
酒呑童子の話です。
京都の近くにある大江山に住まう鬼、酒呑童子とその一味を源頼光とその部下である四天王(渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武)が「退治」した伝説がベースになっています。坂田金時はご存知、金太郎さんですね。
この話、酒呑童子ら鬼とされた人々は、いわゆる「まつろわぬ民」であり、帝や朝廷にしたがうことなく、独自の文化、行動様式を持ったまごうことなき「人」であり、蝦夷や隼人といった人々を同じ人々を指します。
異民族扱いされるならまだしも「鬼」として位置づけられ、当時の民衆にとっても恐れられ、討伐すべきものとして正当化されました。
平安時代、藤原道長の時代、朝廷が日本全国を支配したとはいえ、実際には反朝廷を掲げるものたちや大和の支配を良しとしない勢力が日本全国に存在したことは想像するに難くありません。
本書の場合、酒呑童子(みずからは朱天と名乗っていたという設定)ら鬼の一族は「山の民」として朝廷の支配するところとは一線を画していたこと。大江山に資源があったことからその資源をわがものとするために朱天たちが邪魔だったことなどが物語のベースとなっています。最後は坂上田村麻呂と阿弖流為のように征服する側とされる側のリーダー間の心の交流が描かれていますが、物語を終息させる上ではお決まりのパターンともとれる展開。こうした鬼征討というストーリーによる正当化が実は一番怖かったりするのではないかと思ってします(少し飛躍しているかもしれませんが)。

読み物としては矢野さんの作品らしく、アクション満載で面白く読ませていただきました。

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コメント 2

たかおじー

酒呑童子の話ですか、興味ありますね。
酒呑童子というと漫画でその名前のキャラクターが出てきたのを見たことがあるくらいです。
by たかおじー (2017-06-29 22:13) 

Ganchan

>たかおじー さん
コメントありがとうございます。等身大の酒呑童子が描かれています・・・

by Ganchan (2017-07-14 12:31) 

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