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佐々木譲の「ベルリン飛行指令」 [読書]


ベルリン飛行指令 (新潮文庫)

ベルリン飛行指令 (新潮文庫)

  • 作者: 佐々木 譲
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1993/01/28
  • メディア: 文庫
 
 
 
 
 
昭和15(1940)年、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)がドイツ、ベルリンに飛来!・・・・戦後、F1に初参戦を果たしたホンダのエンジニアがその噂を聞きつけジャーナリストに取材を依頼した・・・物語はこうして始まります。ホンダのエンジニアはゼロ戦のエンジンの改良に携わった経験があり、ゼロ戦のドイツへの飛来という突拍子もない噂に大きな関心を寄せたのでした。
最初はルポルタージュ的に始まる本書は、一気に昭和15年、日独伊三国同盟の時代へと遡ります。英国本土攻撃が予定通り進まないのはドイツの戦闘機の航続距離が短いことなどがその原因として、新しい戦闘機の開発を検討していたところ、同盟国日本で最新鋭の戦闘機が開発され、中国戦線ですばらしい成果をあげたという情報がヒトラーの耳に入ります。
ヒトラーはゼロ戦をドイツに移送し、もし性能がかなうのであればドイツでのライセンス生産も視野に入れた計画を立案します・・・
いわゆる第二次世界大戦直前のお話。ヨーロッパ戦線、中国戦線が開戦状態にあり、日独伊三国同盟が成立した直後の世界情勢にあって、台湾、インドネシア、中国、インド、イラン、イラク・・・さまざまな事情、国情にあった国々のエピソードを交えながらゼロ戦がいかにしてベルリンまでたどり着いたのか?戦闘機乗りでありながら戦争を嫌い、無謀ともいえる計画に乗った主人公とその部下の記録に残らないエピソードです(フィクションですが)。日本軍が中国での重慶爆撃や南京攻略の際に多くの市民を機銃掃射した際、戦闘に参加していた主人公の戦闘機の機銃が故障、弾が出なくなったという理由で現場を回避した主人公の「(殺戮という)蛮行と(成功の見込みのないドイツへのセロ戦移送という)愚行をどちらか選べといわれたら、私は迷うことなく愚行を選びます」と言い切った主人公のセリフ が印象に残ります。
主人公を取り巻く家族やその友人たち、インドのマハラジャと日本のスパイ、イギリスの圧迫に耐えかねゼロ戦にイギリス空軍の攻撃を依頼したイラク軍大佐・・・単なる冒険談ではなく、それぞれの国の当時の時代や植民地支配や経済戦争にまつわる話・・・広大で深みのある小説でした。お奨めの一冊です。 

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