中山七里の「総理にされた男」 [読書]
- 作者: 中山 七里
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/08/21
- メディア: 単行本
総理大臣を父に持つ息子がひょんなことから父親と入れ替わって総理大臣を“演じる”というお話、民王 (文春文庫) という本がありました。テレビドラマにもなってなかなか面白いお話だったのですが、本書もある意味、同じようなモチーフの作品と言えるでしょう。
現役の総理大臣の物まね、といっても容姿そのものが似ているという役者が、本物が病気の間、身代わりを演じるというストーリー。国会議員であれ、総理大臣であれ、元はただの人。とはいえ、政治家を目指してその職に就くということと、ノンポリの人間が現役の総理大臣の職務をまっとうできるかといえば、そうは問屋が卸さないのは容易に想像がつきますが、本書の主人公はなぜかこなしてしまう。官房長官と主人公の友人である政治学者がサポートしているとはいえ、なぜにこうも身代わりを演じ続けられるのか?という疑問は物語の冒頭からの疑問ではあります。
が、身代わり総理のパフォーマンスや考え方は、今の不満だらけの現実の政治にもやもやしている人にとっては明解で喝采すら送りたくなるような気持ちのよいものです。
ある種、現実の政治における矛盾やアンタッチャブルな問題に対し、こうやったらすっきりするのに・・・というシミュレーション小説のようでもあります。
政治家としてのパフォーマンス、考え方、思想・信条に違和感を持つ読者もいるかもしれませんが、ある意味、理想的ともいえる政治家の姿が描かれているのは間違いありません。まあ最後にNHKのデータ放送で信任をとったくだりは笑えましたが・・・
コメント 0