五十嵐貴久の「誘拐」 [読書]
本書は五十嵐先生の「贖い」の前に出版された作品で、「贖い」で主人公となった星野警部のシリーズ第1作目の作品です。実は出版当初に本作は一度読んでいて(読み返したら思い出しました)、「贖い」でいやらしいキャラを演じた星野警部の人となりは既に知っていたはずなのですが、すっかりと忘れておりました。
もっとも本書では、まがりなりにも組織人としての分をわきまえており、「贖い」のように暴走(というか無視)することがなかったことから、印象に残らなかったのかもしれません。内容も星野警部のキャラよりも事件そのものの壮大さ、スケールの大きさからくるエンタテインメント性に心を奪われ、個々のキャラクターが埋没してしまった感があります(韓国大統領来日、日韓の懸案解決という舞台設定は、昨今の日韓関係を先取りしていましたね)。
「贖い」にしろ、本書にしろ事件の発端、犯人の動機は全く個人的なもの。 これだけの事件を引き起こすほどのことか?と思いつつ事実は小説より奇なりという言葉もあって、なきしもあらずといった感あり。収まりどころ良い作品として納得、堪能させていただきました。
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