月村了衛の「土漠の花」 [読書]
日米首脳会談に合わせて本書を手に取ったわけではありませんが、内容からすると実にタイムリーな作品となってしまいました。日米の新たな安保体制、安倍政権が目指す集団的自衛権他新たな法整備についても日本周辺域に止まらない可能性が高いといわれています。本書は日本の近い将来を示すある種のシミュレーション小説かもしれません。
本書の舞台はアフリカのソマリアです。海賊対策のために派遣された自衛隊・自衛官が主人公です。ジブチの氏族間の内戦に巻き込まれ、自らの命を守るために戦わざるを得なくなった自衛官・陸上自衛隊の部隊が多くの仲間を失いながらもなんとか帰還する物語。
小説としては非常に面白い。戦争アクションとしての完成度は高く、はまったら一気読み間違いなし、という作品です。主人公を始めとして個性豊かなメンバーの活躍シーンは見どころであり、かつ登場人物の背景描写もきちんとしている。脇役ではありますが合気道の達人、朝比奈1曹がいい感じです。
もっともこうした「巻き込まれた戦闘」の可能性が今後高まるとしたら・・・というか現実味を帯びてきた最近の情勢。現場ではわが同胞である自衛官はもとより“敵”とされる人々との戦いは正義も悪もない、互いが命を懸けた殺し合いになってしまうことはいうまでもありません。こうした状況になる前に何をすべきか?どうするべきか?あってはならない自衛隊の戦闘行為を隠そうとする防衛省・政府・・・すっきりしない読後感は本書からのそうした問いかけがあるからかもしれません。
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