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矢野隆の「乱」 [読書]

乱

  • 作者: 矢野 隆
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
島原の乱、天草四郎のお話である。
この歴史的事実をモチーフにした作品は多い。天草四郎なる人物は謎の多い人で女性だったのでは?という自由度も受け入れられ(もちろんフィクションとしての話)、実際に映画やテレビでは女性の俳優さんが演じたこともある。
さて、本作では“虎”という青年が登場する。虎は山奥で母一人、子一人で育った“野生児”で、言葉もろくに話せない獣のような生活をおくっていたが、ある農村に食糧を盗みにいった際、囚われの身となり、村人に殺されそうになったとき、たまたま村を訪れていた四郎に助け出される。
それ以降、虎と四郎は一緒に過ごすことになるが、四郎が島原の乱の旗頭に祭り上げられるにつれて虎と四郎の関係は微妙なものになっていく。方や切支丹の長、神の御子として百姓、浪人を扇動し、その意に反するものは容赦なく殺し、その挙句、幕府との全面戦争に突入する。敬虔なカトリック教徒であった四郎は、たとえ切支丹のため、圧政に苦しむ百姓のためとはいえ、その手段としての戦に反発を覚え、自らの信念と行動とのギャップに悩む。四郎からの教えを受けた虎は、そうした四郎の悩みを次第に感じ取りながらも、四郎とともに生き、四郎を守ることで、自らの生きる意味を考える・・・・
本作の時代背景や置かれた立場はあくまでも舞台の一つに過ぎず、二人の青年の友情物語であり、ある種のさわやかささえ感じる小説です。
本作では敵役となる幕府老中松平信綱や柳生十兵衛も存在感があり、ただ単に悪でないところがよい。ちなみに柳生十兵衛は隻眼の剣士としてさまざまな小説や映像作品に登場しますが、なぜ、隻眼になったかは本作を読むとその答えが得られます。もちろん、本作のみの答え。他の作品では別の理由(父の宗矩との稽古で失明?または隻眼でなかったという説もある)で隻眼になったことになってます。まあ、この辺は矢野さんお得意のアクションシーンを際立たせるためのエピソードとして読み流しても良いことではありますが・・・ 

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