道尾秀介の「カラスの親指」 [読書]
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)
- 作者: 道尾 秀介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/07/15
- メディア: 文庫
本書に登場する人物の背景設定に切なさを感じます。
「正直者が馬鹿を見る」・・・何気なく送っている日常の中で、多くの人は正直でありたいと思っているのではないでしょうか?借りたモノは返す。それが正しいこと。それがお金であればなおさらで、返すのは当然。それを履行できなかった者は非難を浴びる、陰口をたたかれる、それが世間というもの。
ちょっとしたことで借金を背負う羽目になり、一生懸命返済にいそしむ。それがどうしようない借金地獄に・・・客観的にみればどうしてそんな目にあうのか不思議にみえるかもしれませんが、借金当事者は周りが見えないことが多い。世間体や正直でありたいとまじめに考える人はなおさらです。
本書のようににっちもさっちもいかなくなったものが、今度は借金を取り立てに回るという恐ろしい連鎖は結構多いのかもしれません。金銭貸借から犯罪へ。被害者から加害者の立場へ・・・本当に切ない。
正直者、まじめな者の心理に漬け込む犯罪こそ最も憎むべきことですが、いったんダークサイドに落ちてしまうことの恐怖と切なさ・・・本書のストーリーとは別に、切なさを感じながら読んだ本書ではありました。
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