和田竜の「村上海賊の娘」 [読書]
歴史、時代小説を数多く読んできたという自負はありますが、海賊を主人公にした小説、物語を読むのは初めてです。村上海賊は戦国モノでは有名な存在ですが、あくまでも脇役の存在でしかありませんでした。少し前に読んだ島田荘司の「星籠の海 上」でも村上海賊が物語の背景を語る上で重要な存在でしたが、これはあくまでも現代劇。戦国時代最盛期で、しかもかの有名な木津川の合戦の詳細は、本書を読んで初めてその詳細、流れを知ったという具合です。
村上海賊の娘、というタイトルからもわかるように、主人公は村上海賊でも本家筋の能島村上家の姫、景(きょう)なのですが、彼女を取り巻く海賊の諸氏のキャラクターは実に面白く描かれています。特に敵方として描かれることになる真鍋海賊及び泉州侍の面々は実に読んでいて頼もしい存在であり、男子であれば血湧き胸躍る存在としていくつになっても憧れる対象として描かれています。
男勝りのかっこいいキャラである景姫もキャラクターとしては魅力的ではありますが、真鍋海賊の若き当主、七五三兵衛にあしらわれ、諭される展開は、読者も納得、という感じ。対する村上海賊の姫に対する思いも”男”として良く分かる。
本当、こいつら敵も味方もいい奴らばっかり、という展開です。和田さん、本書を書くに当たってたくさんの史料を参照されたようで話の流れは史実に近いのでは?と思わせるストーリー。フィクションだけどはるか戦国の昔にこうした奴らがいたのでは?というロマンがありました。
瀬戸内に行ってみたくなりました。
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