横山秀夫の「64」 [読書]
横山秀夫さんの小説を読むとある種の緊張を覚えます。読んだことがある方はご存知だと思いますが、登場人物それぞれのキャラが立ちすぎていて、それぞれが反発しあっている。登場人物同士が慣れ合うことは皆無といってよく、原則、誰も信用していない。油断するとすぐ揚げ足を取られる。油断ならない・・・こうした登場人物オンパレードですから、読者としても作品に入り込めばこむほど、緊張感にさいなまれ、みんな疑ってかかってしまう。
よって、彼の作品を読むときは、精神状態に余裕のあるときしか読めません。私は・・・。気分は暗くなるし疲れる。
まあ、本作に限らず、彼の作品に登場する人物たちは、いずれも仕事に生きる男、ストイックな男たちが多い。そういう意味で尊敬するというか周囲ばっかりを気にしている私にとっては見習いたい人たちでもあるわけで、読んでいるときはほんの少しではありますが、仕事に対する意識や周りの人たちに対する向き合いかたもちょっと影響されているような気がしないでもない。
本作はそうした横山作品の独特の雰囲気を十二分に醸し出しつつ、警察エンタテイメント作品として非常に面白く読ませていただきました。
ちょっと俯瞰してみれば、警察や記者クラブといった、やや世間からみたら特別な空間を舞台にしたものであり、物語で男たちがこだわる面子や建前は、ごくごく限られた空間の中の出来事。仕事に対する考え方や行動、組織に対する対し方などは、高度経済成長時代の日本の雰囲気でもあるような気がしています。
こういう雰囲気、嫌いではないです。
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