高橋直樹の「霊鬼頼朝」 [読書]
源頼朝といえば、いいくにつくろうかまくらばくふ、「1192年、鎌倉幕府成立」と覚えた世代。1192年は頼朝が征夷大将軍に任じられた年。最近の学説では、実質的に幕府の形態を整えた1185年説が有力だとか。新たな学説や発見、解釈によって歴史は変わるもの。本書はそんな観点からみると、あ~、なるほど、といえる作品です。
本書の本当の意味での主人公ともいえる源頼朝は、源義経や範頼といった兄弟、血縁者を容赦なく罰し、殺しました。家族、一門であろうと新しい政権と秩序を維持するためには厳罰をもって臨んだ姿勢は、後の武家政権による日本支配の礎を築いたともいえるのですが、一方で源氏による将軍は頼家、実朝の3代で途絶え、北条執権幕府にとって変わられます。
本書は、もしかしたら4代将軍に就任したかもしれない頼朝の子、頼家の異母兄弟であった貞暁、清盛の妻、時子の弟でのちに関白にまでなった平時忠と源義経、奥州藤原氏4代の藤原泰衡、鎌倉幕府3代源実朝らを主人公にした短編集です。いずれも歴史の中では脇役であり、どちらかといえば時代の流れを読めずに、歴史の主人公になり損ねた人々ですが、頼朝本人、あるいはその影に怯えつつもなんとか生きようとした人々の話でもあります。
むろん一つの解釈、フィクションではありますが、小説というスタイルで当時の人々の生き様をみるのも面白い。歴史小説の醍醐味かもしれません。
大変ご無沙汰しています
フィクションで歴史を楽しむのも有りですね!
by ハイマン (2012-04-22 15:04)
>ハイマン さま
美しい写真、楽しみにしています
by Ganchan (2012-04-23 15:45)